相続税の基礎知識
基礎控除・財産合計・債務控除
「相続税がたくさんかかるのでは?」と心配される方は多いですが、実際には相続が発生した方のうち9割以上に相続税はかかりません。まず基礎控除の計算方法と財産の整理方法を理解することが、正確な判断への第一歩です。
相続税の基礎控除
相続税がかかるかどうかを簡単に確認する方法は、「基礎控除額」と「正味の財産総額」を比較することです。正味の財産総額が基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません。
法定相続人数:3人
3,000万円+(600万円×3人)
基礎控除額 4,800万円法定相続人数:5人
3,000万円+(600万円×5人)
※配偶者・子・親が全員いない場合
基礎控除額 6,000万円法定相続人の相続順位
配偶者(夫・妻)は常に法定相続人となります。血族相続人は相続順位が高い方から順に法定相続人となります。
被相続人の夫または妻。婚姻関係があれば必ず法定相続人となります。
被相続人の子ども(直系卑属)。最優先で相続人となります。
第1順位(子)がいない場合に相続人となります。
第1・第2順位がいずれもいない場合に相続人となります。
基礎控除額の計算における注意事項
- 養子は実子がいる場合は最大1人まで、実子がいない場合は最大2人まで法定相続人に含める(3人目以降は含めない)
- 相続放棄した人がいても、法定相続人の人数には含める(相続放棄は相続財産の取得を辞退するだけで、人数カウントには影響しない)
- 実際に遺産を取得しない法定相続人がいても、人数には含める
- 受遺者(遺言書によって遺贈された法定相続人以外の人)は人数に含めない
【注意】家族構成の変化で基礎控除額が変わります
基礎控除額は相続発生時点の法定相続人の数で計算されます。子の死亡・離縁・養子縁組など家族構成の変化により控除額が上下することがありますので、定期的に確認しておくことをおすすめします。
財産額の合計と課税の有無
財産額が基礎控除額より明らかに少なければ相続税は不要ですが、ギリギリもしくはそれ以上の場合には、プラスとマイナスの財産を正確に把握し「正味の財産総額」を算出する必要があります。
注意が必要な財産
・生命保険の死亡保険金・死亡退職金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象です(非課税枠あり)。
・貴金属・骨とう品は1点5万円以上となる場合は個別評価が必要です。コレクターの方はご注意ください。
基礎控除額と正味の財産総額を比較
例:正味の財産総額5,000万円・法定相続人4人の場合
基礎控除額:3,000万円+600万円×4人=5,400万円
5,000万円 < 5,400万円 → 相続税ゼロ・申告不要
例:正味の財産総額4,000万円・法定相続人1人の場合
基礎控除額:3,000万円+600万円×1人=3,600万円
4,000万円 > 3,600万円 → 申告・納税が必要な可能性あり
正味の財産総額が基礎控除額を超えていても、配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例などを申告により適用することで、相続税をゼロにできるケースがあります。この場合でも相続税申告は必要です。
債務控除
被相続人に借入金や未払金などの負債があった場合、それらは「債務控除」として相続財産から差し引いて相続税を計算することができます。
| 種類 | 具体例・注意点 |
|---|---|
| 借入金 | 銀行・個人・法人からの借入金。残高証明書で確認します。 |
| 各種未払金 | クレジットカード未払金、病院・介護費未払金、水道光熱費など。死亡後に支払った領収書・請求書が証拠となります。 |
| 未払税金 | 固定資産税・所得税・住民税・消費税など未払分。固定資産税は毎年1月1日が債務確定日のため、未払残額全額が控除対象となります(例:年間20万円のうち5万円支払済なら15万円を控除)。 |
| 準確定申告の税額 | 被相続人の死亡年の所得税申告(準確定申告)で発生した納税額も控除可能です。 |
| 敷金・保証金 | 賃貸物件の借主に対して退去時に返還が予定される預かり敷金・保証金は債務として控除できます。 |
債務控除の対象とならないもの
保証債務:誰かの借入に対する保証から生じる債務は、主たる債務者が弁済不能かつ回収見込みがない状態でない限り控除できません。
連帯債務:被相続人が負担すべき金額が明確になっていないものは控除できません。
申告時に準備すべき書類
相続税がかかるかどうかの判断は基礎控除と財産の把握から始まります。財産の見落としや債務控除の漏れはそのまま税負担の過不足につながります。「ギリギリかもしれない」と感じたら、早めに税理士へご相談されることをおすすめします。