長期金利の低下を受け、生保会社が、養老、終身保険など貯蓄性の高い商品の保険料を12年ぶりに一斉に引き上げることを検討しています。現在1.5%の標準利率を来年4月から1.0%に下げる見通しです。
生保各社、保険料一斉値上げ検討 来春以降、12年ぶり
報道にある標準利率というのは、生保会社が集めた保険料を運用する際に予定する利率のことで予定利率ともいいます。実際には、生命保険各社は商品タイプ別にそれぞれ決めていて、例えば一時払い養老保険では、既に1%を切る予定利率が適用されています。
予定利率が下がると、特に貯蓄性が高い養老保険や終身保険、個人年金保険への影響が大きく、これらの保険料は一斉に上昇します。
なぜ、金利が下がると生命保険料が上がるのか、不思議に思われる方もいると思います。
複利計算の例では、
100万円を1.5%で預けた場合の5年後の受取額は1,077,000円
100万円を1.0%で預けた場合の5年後の受取額は1,051,000円
受取額は1.5%で預けたほうが26,000円多いです。
では、5年後に100万円受取るために、いま預ける額はいくらか計算すると
1.5%の場合928,260円
1.0%の場合951,466円
となります。
満期金100万円、預けた額を保険料としてみるとおわかりいただけると思いますが、利率が高いほうが保険料は少なくなります。
予定利率は、1989年までは6%という今ではありえない率になっていました。その後1990年5.5%から2001年1.5%まで一貫して低下し、2001年以降は1.5%のまま現在に至っています。生命保険会社は、予定利率よりも運用成績が悪い場合には、その差額を補填しなければなりません。生命保険は長期に及びますから6%の予定利率の契約が、終身保険や個人年金保険には今でも残っていて、逆ザヤとして生命保険会社の経営を圧迫しています。
逆に契約者から見ると、高い予定利率の生命保険に入っているということは、運用を約束されたようなものです。逆ザヤを解消したい生命保険会社からは、保険の見直しを強く勧められますが、契約転換をすると予定利率も新しい低い利率に置き換わってしまいますから、保障額を増やしたい場合には、高い予定利率の契約はそのままにして、追加で別の生命保険を契約したほうが賢明です。
ご自分の生命保険の予定利率は、保険契約書に書いてある契約時期でおおよそわかります。一度チェックしてみるとよいでしょう。
また、これから養老保険や終身保険、個人年金保険といった貯蓄性の高い生命保険を予定されている場合には、予定利率が下がるまえの契約を検討しましょう。予定利率より実際の運用利回りが良ければ配当として受けとることはできますが、予定利率が高ければ一定の利回りを約束されたようなものですから、やはり高いうちに入っておくほうが有利です。