信託銀行業界が新商品に沸いています。
業界がかねてから要望していた「教育資金の一括贈与に係る非課税措置制度」の2013年4月の開始を控え、
早速、各社とも富裕層の囲い込みを開始しているようです。
4月から教育資金贈与の非課税導入 信託ビジネス、顧客争奪戦激化/yahooニュース
どこのご家庭もそうですが、お孫さんのこととなると盲目的になりがちですよね。
そこで今回は、「教育資金贈与の非課税制度」について
◎賢い利用のポイント
◎賢い信託銀行の選び方のポイント(注1)
を解説します。
なお、制度については2013年度税制改正大綱を元に解説しています。
1.教育資金贈与の非課税制度の仕組み
祖父母から孫への一括贈与のうち、教育資金として使用される資金について、1500万までを非課税とする制度です。
通常の贈与であれば高い税率の贈与税がかかるところですが、これを一定の要件を満たすことで非課税にして、祖父母世代から孫世代への資産の移転を促すことが制度の目的です。
制度を利用する税金面のメリットは次の点です。
○1,500万円の贈与が非課税でできること
○相続税の対象となる財産を少なくすることができること
要件と手続きの流れ
① お孫さんが、信託銀行に自分名義の口座を開きます。
[要件]お孫さんの年齢は30歳未満
[要件]信託銀行経由で教育資金非課税申込書(仮称)を税務署長に提出
② 祖父母は、信託銀行のお孫さん名義の口座に贈与資金を入金します。
[要件]贈与期間は、2013年4月から2015年12月末までの一括贈与
[要件]非課税額は、お孫さん一人当たり1500万まで
③お孫さんは、必要になった都度、教育資金を引き出します。
[要件]教育資金に使ったことを証明する領収書などを信託銀行に提出
使途範囲は、学校等に支払われる入学金や学費等、塾・習い事といった学校等以外の者に支払われる一定の金銭です。
塾・習い事等(学校等以外)の上限は500万円です。
③お孫さんが30歳になったところで精算します
残金があれば、通常の贈与税がその年に課税されます。
2.教育資金贈与の非課税制度の利用のポイント
お孫さんが30歳になるまでの残り年数は充分か? | 残り年数が少ないと使い残す可能性が高くなりますが、30歳までに使い切らないと高い税率の贈与税が待っています。特に20歳を超えている場合は、お孫さんの意思も確認したほうがよいでしょう。 |
教育資金として必要か? | 必要なのは教育資金以外ということはないでしょうか。祖父母、父母、お孫さんで話し合いをすることが重要です。また、何年後にどれくらいの教育資金が必要かおおよそを計画しておきたいところです。 |
祖父母の老後資金の備えは充分か? | 教育資金贈与で信託した後は、教育費用以外では使えなくなります。祖父母が老後資金を充分に準備されていることが重要です。 |
3.信託銀行選びのポイント
面倒見の良い信託銀行か? | お孫さんが口座から教育資金を引き出した場合に信託銀行に領収証を提出するなど、手間はかかります。そのため何かと面倒見の良い信託銀行を選びたいところです。対応の早さも面倒見の良さのポイントです。 |
信託手数料は他と比べ高くないか? | 大手各社であれば、それほど大きい開きはないと思いますが、全く同じではありません。預ける金額が大きいので、念のため確認しておきましょう。 |
資産価値を高めてくれそうか? | 信託期間は長期にわたるため、資金は長期間固定されます。 運用次第では資産価値が目減りする可能性も否定できません。 |
教育資金に含まれる範囲が具体的に決められていないなど、制度内容には不明な点があります。
適用を受けるための贈与の期限は2015年12月末まで。 時間はまだあります。
急ぐ理由が無ければ、各社の商品内容を比較して、じっくり検討すると良いでしょう。
(注1)信託銀行以外の信託会社、銀行及び第一種金融商品取引業者でも取扱い可能です。