相続税の増税路線が打ち出されていますが、すでに足下の負担は増加してきているようです。
先日、国税庁から公表された平成22年分の相続税の申告状況をもとに解説します。

銅像

平成22年分の相続税の申告状況のポイント(カッコ内は対前年比%または対前年増減額)

  • 全死亡者数に対する課税対象の被相続人数である課税割合は4.2%と増加し、過去最低であった平成21年4.1%から上昇に転じた。
  • 税額は、総額1兆1,754億円(101.2%、136億円増)と増加する一方で、被相続人1人当たりでは2,363万円(139万円減)と減少した。
  • 課税価格は、総額(103.4%)が増加し、土地(330億円増)、現金・預貯金等(1698億円増)、有価証券(512億円増)のいずれもが増加した。

以上のように、相続税は、国から見たら増収となりました。興味深いのは、土地の路線価格は下落しているにもかかわらず、土地の課税価格は増えていることと、負担者一人当たりの相続税額が少なくなったことです。
このことは、従来は相続税負担が生じていなかった庶民的資産家層にまで相続税が及ぶようになってきたことを示しています。

その原因を探るために、あらためて平成22年の税制改正にさかのぼってみます。
下は、相続税関係の主なポイントです。

改正項目 改正前 改正後
1.定期金給付契約の評価方法の改正 年金払いのような一定期間、定期金を受け取る権利を評価する場合、残存する受取り期間に応じて30%(5年以下)から80%(35年超)を減額できた。 解約返戻金、一時金、予定利率で算出した額のいずれか多い金額で評価されることとなった。
(評価による減額差がほぼなくなった)
2.小規模宅地等の課税価格の特例 相続人のいずれかが居住または事業を継続した場合、その宅地全体が80%評価減の適用を受けられた。また、居住用(事業用)・貸付用と用途が違う場合でも、割引率の大きい方を全体に適用することができた。 居住または事業を継続した相続人が取得した部分にのみ、評価減を適用することになった。居住用(事業用)・貸付用の用途も面積按分されことになった。(自宅や事業用資産の承継がより難しくなった)

上記1.については、例えば被相続人死亡後6年間、定期金が支払われる契約の場合、定期金合計100万円であれば60万円と評価されるため、節税策としての効果が大きく、幅広く活用されてきました。

上記2.については、配偶者などに宅地をごく一部、相続させただけで、全体の評価を80%減額できたため、節税効果は強力でした。また自宅兼アパートでも敷地全体が80%減額できたため、住宅メーカーがこぞって節税効果として宣伝してきました。しかし平成22年の改正により、これらの節税効果がほぼ無くなりました。

平成22年の申告状況からうかがえるように、従来相続税負担が生じていなかった庶民的資産家層にまで相続税が及ぶことになったのは、この改正の影響が大きいといえます。

上で説明した2つの改正は平成22年4月以降の適用であり、対象期間は9月分です。平成23年は通年が対象となるため、より大きい影響が出ます。
その先には相続税の抜本改正も控えていますから、資産家にはますます厳しくなりそうです。

平成22年分の相続税の申告の状況について(国税庁)