2017年度税制改正で、上場株式の相続税評価額の見直し要望が、金融庁から出されるそうです。
上場株式の相続税評価額を90%に引き下げ、節税対策として不動産に流れている資金を上場株に誘導しようという狙いがあるようです。
今回はこの話題についてお話します。

まとめ

  • 上場株の相続税評価額を90%に。税制改正で引き下げを要望
  • 上場株は現状でも時価の100%評価ではない
  • 10%割引はインセンティブにならない
  • 上場会社のオーナーファミリーにはメリット大

オフィス街

 

(1)上場株の相続税評価額90%に。税制改正で引き下げを要望

相続税は、資産家の悩みの種の一つです。
最高税率55%(平成27年1月1日以降)が適用されると、半分以上の資産を税金で失うことになりますから。

ですから何とかして相続税を減らすためには、計算上の資産総額を減らす工夫が必要です。
そのための工夫の一つが、評価が低い資産へのシフトです。

評価が低い資産の代表格が、土地や建物といった不動産です。
相続税評価額では、土地は公示地価の80%程度、建物は建築費の60%程度となるように評価方法が決められています。
最近ブームとなった、「タワーマンション高層階」投資では、時価よりも80%も低い評価になるケースもありました。 おかげで「タワーマンション高層階」の価格は暴騰しました。

このように相続税評価が低い不動産にシフトが起こるため、あおりを受けているのが、株式市場だと金融庁は考えているようです。
実際のところは、証券会社からの要望を受けて金融庁が動いているのだと思いますが、不動産に向かっている資金を上場株に向かわせるために、90%に引き下げるのが狙いのようです。

 

(2)上場株は現状でも時価の100%評価ではない

上場株の相続税評価額を90%に引き下げる要望に対して、筆者は賛成でも反対でもない立場ですが、現状でも上場株は100%の評価ではないことをお話しします。

上場株の相続税評価は、次のうち最も低い額を選べることになっています。
・被相続人の死亡の日の最終価格
・被相続人の死亡の月の最終価格の平均額
・被相続人の死亡の前月の最終価格の平均額
・被相続人の死亡の前々月の最終価格の平均額

株式相場は変動が激しいので、死亡の日の最終価格よりも、月平均額が10%くらいは低くなっていることは多いです。 逆に、死亡の日の後にどんどん取引価格が下がっていき、気の毒なケースもありますが。

このように現状でも上場株は、幾分かは低い評価となっています。 100%完全にそのまま評価される現金や預金とは違います。

 

(3)10%割引はインセンティブにならない

それでは、幾分低い評価となっている上場株をさらに10%低く評価すると、狙い通り株式に資金が向かうでしょうか?

相続税の負担を少なくするための一環として上場株の持ち高を減らそうと考える人は確かにいます。
しかし、そう考える人は既に上場株の持ち高を減らしてしまっている感じです。

では逆に、上場株の評価が10%低くなるからといって、他の資産から上場株にシフトさせるでしょうか?
現金や預金から上場株へのシフトはありえるでしょうが、そもそも現金や預金を崩して株に投資する人は、“相続税を節税するために”という消極的な理由では買い進まないのではないかと思います。

それでは不動産を売ってシフトはありえるかというと、それもないでしょう。
不動産は少なくとも20%節税できるのに対し、上場株が10%です。これでシフトはおこらないでしょう。

つまり、効果はあまりなく、大きな変化はないように思います。
資産家の資金を不動産から上場株にシフトさせるためには、少なくとも20%は低く評価されることが必要でしょう。

 

(4)上場会社のオーナーファミリーにはメリット大

上場株式の相続税評価額を90%に引き下げで、最も恩恵を受けるのは上場会社の大株主です。

日本の長者番付トップのファーストリテイリング柳井会長は、資産が1.65兆円(2016年)もあります。
資産の多くがファーストリテイリング株だと思いますが、株価次第で相続税が何千億も動きます。
気が気ではないですよね。

柳井会長に限らず、上場のオーナーファミリーは株価次第で相続税が大きく変わります。
やはり、気が気ではないですよね。

それが、上場株式の相続税評価額が90%に引き下げられると、幾分かは税負担が軽くなります。
単純計算ですが、柳井会長の場合、1650億円評価が下がり、相続税が900億円下がります。

10%だけだとあまり評価を下げた感じはしませんが、それでも大株主にとってメリットは大きいといえます。

しかし、
上場株式の相続税評価額を90%に引き下げたとしても、証券市場が活況になるとは思えません。
上場会社の大株主は、基本的に超長期安定株主ですから。